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耳より情報
2023年01月31日 [耳より情報]

高齢になったら金銭管理はどうすべき?

オーケストライフでは、皆さまのお役に立てるくらしや住まいの耳より情報を定期的に発信していきます。今回は、LM総合法律事務所の代表パートナー弁護士 竹中 一真による「高齢になったら金銭管理はどうすべき?」をテーマとした記事をお届けします。



高齢になった際、必ず直面するのが「金銭管理」の問題です。最近ではキャッシュレス化が進み便利になった反面、「色々と複雑になっているので、ついていけない」という声を聞くこともあります。

いざ、お金の管理を身近な存在である家族に任せようと思っても、「子どもとはここ数年疎遠になっているので、今さら頼めるかどうか……」「子ども(兄弟)が不仲なので、お金のことで揉める気がする」など、あらゆる不安を抱えている方もいるでしょう。

そこでよくご相談のある事例を紹介いたします。ご高齢のお母さまがいらっしゃるAさんと弁護士との会話です。

Aさん:最近、近くに住む母(85歳)から、「物忘れがひどくて困る」と言われることが多く、「もう高齢だし仕方ないよね」と軽く受け流していたのですが……。

弁護士:何かありましたか?

Aさん:実は一緒に買い物に行ったとき、5000円札と1000円札の区別がつかず、そのあと急にパニックになってしまったんです。それから、何となくお金や数字に対して不安があるようで……。

弁護士:なるほど。医師の診断は受けられていますか。高齢者の物忘れだけでなく、認知症の疑いがあるかもしれません。その結果を踏まえ、具体的な対策を考えた方が良いでしょう。もし物事を理解する能力が失われていたり、不十分であると診断された場合には、法律上の制度を利用することで財産の管理をしてもらうことが可能です。


Aさん:では、具体的にどういう方法がありますか?

弁護士:判断能力の程度によって、「成年後見」、「保佐」、「補助」という3つの制度を利用する方法があります。いずれも、認知知症や知的障がいによって判断能力が不十分な人が、生活をする上で不利益を被らないよう、本人の代わりに適切な財産管理や契約行為の支援を行うための制度(後見制度)です。

☆支援を受ける人の判断能力の程度により、後見制度は以下の3つに分けられます。

@成年後見

「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」が対象(日常の買い物を含め常に援助が必要)。成年後見人が支援を行う。


A保佐

「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」が対象(日常の買い物は可能だが、高額品の購入や契約締結が困難なケース。中度の認知症)。保佐人が支援を行う。


B補助

「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」が対象(日常の買い物、高額品の購入や契約締結も可能だが、援助があった方が良いと思われるケース。軽度の認知症)。補助人が支援を行う。



Aさん:成年後見人や保佐人、補助人は、どんな人が選任されるのでしょうか?

弁護士:一般的には親族か、私のような士業(弁護士、司法書士、行政書士など)です。ちなみ選任は、すべては家庭裁判所の判断にゆだねられるため、家族を選任して欲しいと希望していても、実現するとは限りません。
裁判所に勝手に後見人を選任されるのが嫌だという場合、今は判断能力がある方が、将来、万が一認知症を発症した場合に備えて、成年後見人となるべき方を指名することのできる任意後見の制度もあります。

Aさん:成年後見人には、どのような役割があるのでしょうか?

弁護士:大きくは2つ、「財産管理」と「身上監護」ですね。
・「財産管理」:被後見人の預金(有価証券、不動産)などの資産管理や年金の管理、税金や公共料金の支払い、社会保険関係の手続きなどを行います。
・「身上監護」:医療や介護、施設入所に関する契約など、本人の生活に関する法律行為を行います。
(後見人は毎年1回、被後見人のために行った事務手続きなどについて、家庭裁判所に報告する義務があります)

Aさん:なるほど〜。成年後見人にこれだけの役割があるとすれば、報酬が発生しますよね?

弁護士:はい。親族の場合は、報酬を請求しないケースが多いと思いますが、士業など専門家が、成年後見人や保佐人、補助人に選任された場合は発生します(家庭裁判所において報酬付与の申し立てにより決定します)。また、任意後見制度の場合は、当事者間で決定し契約書に明記する形となります。



Aさん: ほかにも、利用できる制度はありますか?

弁護士: 「家族信託」という制度があります。判断能力のある元気なうちに家族へ財産の管理を託し、その財産を誰が引き継ぐか?を決めるものです。

Aさん:何となく、任意後見と似ている気がしますが……?

弁護士:大きな違いは、「契約が発生する時期」ですね。任意後見制度は、認知症などの診断が出た際、そこから本人や親族が後見人の選任を申し立てスタートします。一方、家族信託は認知症の発症に関わらず、希望の時期からすぐに始めることができます。また、家庭裁判所が関わることもありません。

Aさん:それは大きな違いですね。

弁護士:また、任意後見人の役割は「財産管理」や「身上監護」に限られますが、家族信託の場合は、財産活用や相続税の軽減などを任せることも可能です。しかし、逆に、本人に代わって法律行為をする「身上監護」に該当する手続きは、行うことができません。財産管理や手続き関連をすべてカバーするには、両者を併用する方法も考えられます。

Aさん:もう少しそれぞれの制度を理解した上で、母の現状や将来を見据えながら、ベストな選択をしたいと思います。ありがとうございました。

今回のAさんのように、実際にご家族に不安な要素が生じてから対応策を考える方も多いかもしれません。しかし、事前にどのような対応方法があるかを認識しておくことで、必要なタイミングで、的確な判断ができるはずです。

オーケストライフには、士業グループLTRのメンバーが所属しています。ご質問、ご相談などがありましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。
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